園芸店やSNSで、吸い込まれるような繊細な八重咲きのアジサイに出会い、一目惚れしてしまった経験はありませんか。その名は「てまりてまり」。小さな花が寄り添って丸い手鞠(てまり)を作る姿は、一度見ると忘れられない魅力があります。
しかし、その可愛らしさゆえに「私に育てられるかしら?」「剪定を失敗して来年咲かなかったらどうしよう」と不安を感じることもあるでしょう。せっかく迎えた大切な一鉢を、一年限りの思い出にしたくないというあなたの想いは、ガーデニングを楽しむ者として非常に共感できるものです。
実は「てまりてまり」は、見た目の繊細さに反して非常に強健で育てやすい品種です。ポイントさえ押さえれば、あなたも毎年あの満開の姿に出会うことができます。本記事では、来年も確実に花を咲かせるための剪定スケジュールや、好みの色を維持するコツを詳しく解説します。
「てまりてまり」とは?加茂セレクションが誇る強健な八重咲きアジサイの魅力
「てまりてまり」は、静岡県の加茂花菖蒲園(加茂株式会社)によって育種された「加茂セレクション」を代表する人気品種です。最大の特徴は、小さな八重咲きの花が密集して咲くその姿にあります。
テマリ状の八重咲でかわいらしい丸弁。一輪の花は小型だが、ひとつづつの花が八重咲になっていて、近くで見るととても可愛らしく見飽きない。
この品種は、ヤマアジサイと西洋アジサイ(ハイドランジア)の交配によって誕生しました。西洋アジサイの華やかさと、ヤマアジサイの丈夫さを併せ持っているのが強みです。特に、冬の寒さや乾燥で花芽が枯れてしまう「芽飛び」という現象が起きにくい点は、初心者にとって大きな安心材料となります。
加茂セレクションは庭植え向きの丈夫さを持ち合わせながら、花がバラエティーに富み美しく、毎年よく咲くように改良を重ねたアジサイの品種群です。従来のハイドランジア系の品種は地域によっては冬場の乾燥によって花芽が枯れてしまうことがありますが、加茂セレクションはこの芽飛びが比較的少なく安心して育てられる
出典:園芸ネット 公式サイト
かつては「花手鞠」という名称で流通していたこともありますが、現在は「てまりてまり」として広く親しまれています。
失敗しない育て方の基本|置き場所・水やり・冬越しのポイント
「てまりてまり」を健康に育てるためには、日々の管理で「水」と「光」のバランスを整えることが重要です。
置き場所と日当たり
基本的には半日陰を好みます。午前中に日が当たり、午後の強い西日が当たらない場所が理想的です。特に夏場の直射日光は葉焼けの原因になるため、鉢植えの場合は移動させて調整しましょう。
水やりのコツ
アジサイは水を非常に好む植物です。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと与えてください。特に開花期は水切れを起こしやすく、一度萎れてしまうと花が傷んでしまうため注意が必要です。
冬越しの注意点(芽飛び防止)
「てまりてまり」は芽飛びが少ない品種ですが、冬場の極端な乾燥には注意が必要です。冬は葉が落ちて休眠期に入りますが、土の中の根は生きています。土が乾ききらないよう、数日に一度は水やりを行い、来春の花芽を守りましょう。
来年も咲かせるための剪定ガイド|7月下旬までの「決断」が鍵
あなたが最も不安に感じているのは「いつ、どこで切ればいいのか」という剪定のタイミングではないでしょうか。「てまりてまり」を来年も確実に咲かせるためのルールは非常にシンプルです。
剪定のデッドラインは「7月下旬」
アジサイは夏以降に翌年の花芽を形成します。そのため、剪定は7月下旬から8月上旬までに済ませるのが鉄則です。これ以降に深く切ってしまうと、せっかくできた花芽を切り落とすことになり、翌年花が咲かなくなってしまいます。
秋まで花を楽しみたい場合のリスク
「てまりてまり」は花もちが良く、色が変化していく様子(秋色あじさい)も非常に美しいものです。しかし、長く楽しむことには代償があります。
花もちも良いので、うまく管理することができれば、秋まで楽しむことができます。ただし、秋まで花を楽しむと花芽ができるまでに剪定することができず、翌年は花を咲かなくなります。
もし「来年も絶対に満開にしたい」のであれば、花が少し色褪せ始めた7月中に思い切って剪定しましょう。どうしても秋まで楽しみたい場合は、株の一部の枝だけを残し、残りの枝は早めに剪定するという「半分ずつの管理」も一つの方法です。
剪定する位置
花から2〜3節下の、脇芽が出ているすぐ上でカットします。これにより、翌年に向けて充実した枝が伸びていきます。
青かピンクか?「てまりてまり」の色をコントロールする土壌pHの調整方法
「てまりてまり」は、土壌の酸度(pH)によって花色が変わる性質を持っています。
| 希望の色 | 土壌の状態 | 調整方法 |
|---|---|---|
| 青色 | 酸性 | ピートモスを混ぜる、アジサイ用の青色の肥料を与える |
| ピンク色 | アルカリ性〜中性 | 苦土石灰を混ぜる、アジサイ用の赤色の肥料を与える |
地植えにすると、もともとの土質の影響を受けて色が混ざり、青とピンクのグラデーションになることがあります。これを「色が安定しない」と捉えるのではなく、一株の中で移ろう「てまりてまり特有の幻想的な美しさ」として楽しむのも、この品種の醍醐味です。
鉢植えから地植えへ|「てまりてまり」を庭で大きく育てる手順
鉢植えで楽しんだ後、庭に下ろして大きく育てたいと考える方も多いでしょう。地植えに切り替える最適な時期は、植物が休眠している11月から3月頃(落葉期)です。
- 場所選び: 水はけが良く、半日陰になる場所を選びます。
- 土作り: 植え穴を掘り、腐葉土や堆肥を十分に混ぜ込みます。青色を保ちたい場合はピートモスを多めに、ピンクを保ちたい場合は石灰を少量混ぜて調整します。
- 植え付け: 根鉢を崩さないように注意して植え、たっぷりと水を与えます。
地植えにすると根が自由に伸びるため、鉢植えよりも一回り大きな花を咲かせるようになります。
「てまりてまり」と歩む四季|来年の満開を約束するチェックリスト
「てまりてまり」の繊細な美しさを毎年維持するために、大切なポイントを振り返りましょう。
- 剪定は7月下旬までに: 来年の花芽を守るための最も重要なアクションです。
- 冬の乾燥に注意: 葉がなくても水やりを忘れず、芽飛びを防ぎましょう。
- 土壌pHで色を楽しむ: 青やピンク、あるいはその混ざり合う色をあなたの好みでコントロールしてください。
「てまりてまり」は、あなたの愛情に応えてくれる強健なアジサイです。まずは、今咲いているその姿を存分に愛でてあげてください。そして剪定の時期が来たら、この記事のスケジュールを思い出して、来年の再会に向けた準備を始めてみましょう。あなたの庭やベランダで、再びあの可愛らしい手鞠が揺れる日は、必ずやってきます。